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アサヒ飲料
茶飲料伸びず、低迷続く
 
 アサヒ飲料が業績低迷の長いトンネルから抜け出せない。七月三十日に発表したニ〇〇ニ年十二月期の営業損益見通しは十九億円の赤字。一九九九年の東証一部上場以降、苦戦が続く。清涼飲料市場の飽和状態をにらんで採算重視の戦略を進めてきたが、肝心の商品戦略で他社に後れをとり、ばん回の糸口を見いだせずにいる。

 「予想をはるかに上回る落ち込みだ」。決算発表の席上で、植松増美社長の表情は終始厳しかった。同社の上半期(1一6月)の販売量は前年同期比八%減の四千六百万ケース(一ケースは五百_gペットボトルで二十四本など)。「業界並みのニ%増を目指す」(植松社長)という当初の目様にまったく届かなかった。

 落ち込みの最大の原因は主戦場である茶飲料での惨敗だ。茶飲料はここ数年で急拡大したが、上半期の伸び率は三%程度にとどまった模様。大型ブランドを持つ上位メーカーに消費者が流れ、シェア四位のアサヒ飲料は苦戦を強いられた。

 主力の「十六茶」や「旨茶」が落ち込み、新製品の「中国緑茶 凛(りん)」も販売目標の七割強。稼ぎ頭のはずの茶飲料が一三%減と全体の足を引っ張った。

 アサヒ飲料のシェアは一九九九年の上場時、七%台で三位のキリンビバレッジとほぼ並んでいた。だが二〇〇一年にはキリンビバの九・四%に対しアサヒ飲料は六・五%と差が拡大。二〇〇〇年に「生茶」のヒットで優位に立ったキリンビバに対し、アサヒ飲料は有力商品を生み出せず、消費者を逃してしまった。

 アサヒ飲料のここ数年の主眼は「利益重視への転換」だが、結果的にこの戦略が裏目に出た。販売至上主義を見直し、原価削れ寸前の値下げ競争を進める量販店との取引を縮小したのをはじめ、原材料費の削減や物流の外注なども進め、上半期には二十七億円のコスト削減に成功した。

 だが、販売の落ち込みによる利益の減少は四十三億円とコスト削減効果をはるかに上回った。コスト削減を優先課題として商品強化策が二の次になったことが、業績悪化に直結した格好だ。

ビールと連携 反撃の糸口に

 アサヒ飲料は当面、ビール業界でシェア拡大を続ける親会社アサヒビールとの連携を強化し、ばん回を図る考え。すでにスーパーなどの店頭でお互いの商品を集めた販売コーナーの設置を進めているほか、アサヒビールの業務用販売ルートを活用し、炭酸飲料「ウィルキンソン」ブランドの拡販にも乗り出した。

 「総合飲料メーカー」を目指すアサヒビールにとっても、アサヒ飲料の競争力再生はグループ戦略上の重要課題。今後は商品開発やビールの販路の一層の活用など、さらに踏み込んだ協業を検討する方針だ。

 アサヒ飲料は他社との提携戦略でも活路を探る。すでにカルピスやカゴメ、大正製薬と自動販売機での商品販売で提携したが、今後も各分野で強みを持つ中堅企業と連携し、上位メーカーに対抗していく考え。

 清涼飲料市場が飽和状態に達する中、植松社長は「近い将来、清涼飲料で業界再編が起こるのは当然の流れ」と予測。「独自色ある基幹ブランドがない企業は再編の波にのみ込まれてしまう」と危機感を募らせる。

 業界内での生き残りには、アサヒビールや同業他社との連携強化だけでなく、ヒット商品を生み出す自前の開発力が欠かせない。かつて「三ツ矢サイダー」や「バヤリース」を生み出したような商品開発力の再生が伴わないと、業績回復への道のりはさらに遠のくことになる。 (西岡貴司)  
  2002/08/05 日経産業新聞より
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