日本飲料業界 > 伊藤園 
緑茶浸透進め 売上倍増へ
販路拡
大 米国へも
伊藤園が成長戦略


 飲料各社の新製品が入り乱れる混戦模様の中、伊藤園が強いブランドカを持つ緑茶を軸にした戦略で売り上げを伸ばしている。株式公開から十年で売上高を四倍の二千億円に引き上げた伊藤園は、今期から販売インフラの構築を加速。成長の第二ステージを見据えて攻勢をかける。

 「この春の緑茶戦争を勝ち抜いた」。本庄八郎社長は十二日、東京都内で開いた二〇〇二年四月期決算説明会で自信たっぷりにこう宣言した。

 今春は各社が売れ筋の無糖茶で新製品を相次ぎ投入した。伊藤園の主力ブランド「おーいお茶」もー時は顧客を奪われ、三月の緑茶シェアが昨年夏以後キープしていた三〇%を割り込んだ。

 だが四月にはすぐに三三%まで回復。本庄社長は「試し買いの需要が一巡し、定番商品に消費者が戻ってきた」とほくそ笑む。一〜五月の累計でも業界全体が新製品の食い合いでほぼ横ばいの中、伊藤園は一二%程度のプラスと好調だ。

を根気よく育てる戦略が伊藤園の強みだ。毎年のように新ブランドを立ち上げるより、開発コストの抑制や消費者をつなぎ留めることなどで優位に立てる。五月末に「おーいお茶」をリニューアル発売した際も、リサイクル対応でペットボトルを無着色に変えただけで中身はばとんど変更しなかった。

 伊藤園はこのほど中期経営計画を策定した。ニ〇〇七年四月期に連結売上高を前期比1.5倍の三千億円、二〇一二年四月期には同2.4倍の五千億円にする強気の計画だ。本庄社長は、「十年前に売上高を四倍にすると公言し、達成した。今回も決して夢物語ではない」と言い切る。

 消費者の健康志向で無糖茶が人気を集める中、お茶を中核に商品展開を進めを伊藤園には追い風が吹いている。ただ、強気の中期計画を達成するには、大手に比べて見劣りする販売インフラの強化が課題となる。

 販路の強化策は中期計画の中に具体的に盛り込んだ。まず今後五年以内に自販機の設置台数を十五万五千台と一気に倍増させ、比較的弱い関西などの販売力を強化する。昨年秋から本格展開を始めた小売店向けホット製品用ケースも今期中に一万台程度増やし、お茶を季節を問わず売れる商品に仕立てる戦略も進める。

 中期計画の達成でもうーつのカギを握るのが米国事業だ。

 三月にはニューヨークの高級ブティック街に茶葉や飲料を販売するアンテナショップを開設し、お茶シリーズ「TEAS’TEA」などの本格販売に乗り出した。ショップを基点に量販店への卸も強化し、今期はまず米国で七百万jの売り上げを目指す。

 国内の飲料メーカーで日本と消費者のし好が異なる米国をターゲットに据える企業は珍しいが、伊藤園はお茶のブランドカを生かして現地の日本食ブームに乗ろうともくろむ。お茶飲料の浸透度が低い米国は市場の開拓余地も大きいとみる。

 販売競争が激しさを増す国内の飲料業界では、「近い将来、上位四−五社のグループに集約される」(大手飲料メーカー)との見方もある。伊藤園もカルピスと提携し「エビアン」の販売を始めるなど提携戦略を模索し始めたが、同社の国内シェアはまだ五%台の六位。生き残りには規模の拡大が欠かせない。

 伊藤園は来期から役員の賞与と退職金を全廃し、代わりにストックオプション(自社株購入権)付与を決めた。報酬の業績連動を明確にして役員の士気を鼓舞するのが狙いだ。足元の好業績に流されず、今後も成長の勢いを維持できるかが焦点となる。(西岡貴司)


  2002/06/17 日経産業新聞より
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