日本飲料業界 > KIRIN 
キリンビバレッジ 定番重視に
                    不振商品 早々に見切り
                 営業・広告力を集中
 
 キリンビバレッジが商品ブランドの選択と集中を進めている。売れ筋商品がめまぐるしく変わる清涼飲料の世界では、各社がヒット商品の創出にしのぎを削る。飲料市場がほぼ飽和に達する中、キリンビバは定番ブランドの強化に重点を置く戦略に転換。業績の拡大基調を維持する考えだ。

 キリンビバは九月いっぱいで、今年三月末に発売した新商品「ラクダ」の販売を打ち切る方針を決めた。ラクダはローヤルゼリーなどを配合した機能性が売りで、人気歌手のMISIA(ミーシャ)を使った広告宣伝を展開するなど、期待の大きい新商品だった。

 だが、八月末までの販売は百二十万ケース(1ケースは五百_gペットボトルで二十四本など)。年間目標の五百万ケースに達する見込みが立っていない。「売れ筋商品の『アミノサブリ』にブランドを一本化する方が効果的」(佐藤章商品企画部部長代理)と判断し、異例の短期間で販売を打ち切る。

 定番強化の戦略は、飲料市場の主役である茶飲料でも進めている。茶飲料は消費者の健康志向を受け市場が急拡大してきたが、乱立する各社の新商品の食い合いが激化し、今年は伸びが鈍化している。

 キリンビバも他社をにらみながら茶飲料のブランド数を五種類まで増やしてきたが、「市場の伸びが鈍化すれば、少数の有力商品への集約が進む」 (佐室瑞穂社長)とみて、この夏は最も販売量が多い緑茶「生茶」に営業資源を集中した。

 緑茶に引っ掛けて名付けた「グリングリン作戦」という販促活動を全国一斉に展開。各支社ごとに目標値を定め、地域スーパーや観光地の売店など「生茶」の取り扱いがない売り場を徹底して開拓した。こうした成果から、八月の飲料市場全体が前年同月比二%増と伸び悩む中、生茶は六%増を確保した。

 キリンビバは「生茶」や「聞茶」など年千万ケースを超える大型ヒットを次々と生み出し、販売量はこの三年で一七%拡大した。市場シェアも七%台から一気に九%台まで上昇したが、同社がもう一段の成長を目指すには、主力商品をロングセラーに育てるのに加え、新たな収益源を生み出す施策も必要になる。

 実際、キリンビバは新規の取り組みに手を打ち始めている。親会社のキリンビールなどグループ各社との連携強化と、中国市境の開拓だ。

 グループ会社との連携では、すでにキリンビールと開発したチューハイ「氷結」や、小岩井乳業やキリントロピカーナと企画したアイスクリーム「トロピカーナソルベ」を売り出した。今後も、「グループカを最大限に活用し、清涼飲料の周辺分野の開拓に力を入れる」(佐室社長)考えだ。

 中国子会社の「上海錦江麒麟飲料食品」(上海市)では、「午後の紅茶」に加えて今年二月から「生茶」の生産・販売を開始した。今年の販売数量は前年比三割増の百八十万ケースと大幅な伸びを見込み、収益面でも初めて黒字化を視野に入れた。

 国内の清涼飲料市場がほぼ頭打ちとなる中、今後は業界内で企業間の提携戦略が本格的に動き出すとの見方が多い。コカ・コーラグループやサントリーに続き、シェア第三位の位置を固めたキリンビバが今後、どこまで存在感を高められるか。業界動向を左右する一つの焦点だ。(西岡貴司)

 
  2002/09/06 日経産業新聞より
Home 当社について メール 免責条件 sanpuku trade co.ltd. All rights reserved.